(出典：株式会社TRILL.)
信州大学発スタートアップである株式会社TRILL.は、国土交通省が推進する「地域交通DXプロジェクト」の一環として、法人・個人の未稼働車両を地域住民や来訪者向けにシェアするサービス「OURCAR」の実証実験を、2025年10月1日より長野県内で開始する。
人口減少や運転手不足を背景に公共交通の縮小が進む中、地域には「移動したいが手段がない」交通空白エリアが拡大している。長野県の調査でも、県民の16.2％が「自由に移動できる手段がない」と回答しており、交通インフラの代替策が急務とされている。
一方で、法人・個人が所有する自家用車は稼働率が4.2%にとどまり、多くの車両が日常的に活用されていない。TRILL.は、この課題に着目し、「使われていない車両」と「移動手段を求める人々」をマッチングさせる仕組みとして「OURCAR」を展開する。車両保有者は、専用Webアプリを通じて貸出登録が可能で、利用者は24時間非対面で予約・利用できる。
(出典：株式会社TRILL.)
本実証では、長野市・松本市・上田市など既存エリアに加え、経済的に交通サービスが成り立たなかった地域にも展開する。利用対象は法人車両や公用車、個人所有車まで広がり、月額維持費の削減と移動利便性向上の両立を図る。既に登録台数は40台、ユーザーは1,000人超である。利用者からは「近所で車を借りられるようになり行動範囲が広がった」といった声が寄せられている。
TRILL.では今後、交通弱者支援にとどまらず、インバウンド対応、CO₂排出削減、地域内経済循環の活性化など、多面的な社会課題の解決に向けて事業展開を加速させる意向である。