電動車(EV)の登場と普及は、世界の自動車産業に大きな変革をもたらしている。米国のテスラや中国のBYDは、その普及の先駆者として市場を牽引しており、中国では新車販売の3割、EUでは1割をEVが占める状況となっている。この大きな波は北米や東南アジアでも無視できないほど成長している。
【関連記事】ガソリン価格が15週連続値上がり!政府、補助金支給延長へ
日本の状況は、新車販売の2%程度と、世界の大勢からはやや遅れをとっている。しかし、各自動車メーカーの研究開発や設備投資の動きから、今後の日本のEV市場の成長は必至だ。帝国データバンクが行ったアンケート調査では、全産業の1割がEV市場への参入を済ませているか、あるいは計画しているという結果が出ている。
調査結果によると、EV普及の影響を実感している企業は全体の10%程度にとどまり、大半の企業が「影響はない」と感じている。しかし、規模が大きい大企業ほど、このEVの波をビジネスチャンスとして捉えていることが伺える。地域別の影響を見ると、「プラスの影響」が大きい地域として北関東が、一方「マイナスの影響」を感じている地域として東海が挙げられている。これは東海が伝統的な自動車産業の中心地であることから、既存のビジネスモデルへの打撃が大きいと感じていることを示唆している。
日本の自動車産業は、国の産業全体の中でも特に重要な位置を占めている。製品出荷額ベースで全製造業の2割近くを占めるだけでなく、関連する多岐にわたる産業、雇用をも支えている。その中心には、高い耐久性と信頼性、そして燃費の良さを誇る日本車があり、長らく「ものづくり大国日本」の代名詞として世界に認知されてきた。しかし、EVの時代が到来する中、日本の自動車産業がこれからどのように変わっていくのか、そしてその中でどのように生き残っていくのかは大きな課題となっている。
トヨタ、日産、ホンダといった大手自動車メーカーは、2030年を目処にEVの販売台数を大幅に増やす方針を打ち出している。このような中で、内燃機関車への依存度が高い企業や、従来のビジネスモデルに固執する企業は厳しい局面を強いられるだろう。
現状、EVへのシフトは確実に進行中で、自動車産業全体が大きな転換期を迎えている。それぞれの企業、地域がこの変革の波をどのように受け止め、そして新しい時代に適応していくのかが、今後の日本の産業の成長と繁栄を左右するだろう。
調査詳細はこちらから