特別養護老人ホーム「蟹ヶ谷」(神奈川県川崎市)において、湖山医療福祉グループとWHILL株式会社が共同で導入する「WHILLモビリティサービス」が注目されている。本サービスは、自動運転モデルと自操型スタンダードモデルを同時に採用した世界初の試みであり、2025年5月1日より運用開始となる。これにより、施設内外の移動環境が一層充実し、入居者の快適な生活と職員の業務効率化が期待されている。
高齢化率が29.3%に達する日本において、医療・福祉の現場は深刻な人手不足に直面している。特に特別養護老人ホームでは、入居者の移動支援が職員に大きな負担を強いてきた。蟹ヶ谷でも、従来は入居者が車椅子や歩行で移動する際にスタッフが必ず付き添っていたが、この状況が改善される見込みだ。
自動運転モデルは、施設内の各部屋と浴室を結ぶルートで活用され、スタッフの手配によって入居者を目的地まで安全に案内する。降車後は、機体が無人で待機または所定の場所に自動で戻る仕組みであり、スタッフの負担軽減と業務効率化に大きく寄与する。
一方、スタンダードモデルには、抜群の安定感と操作性を誇る「WHILL Model C2」が採用された。主に施設周辺での利用を想定し、家族との散策時に活躍する。従来のように家族が介助用車椅子を押す形ではなく、入居者自身が操作することで、顔を見合わせながら共に歩むひとときを楽しめる。これにより、入居者の自立支援とQOL(生活の質)の向上が図られる。
湖山医療福祉グループは全国規模で医療・介護事業を展開し、「できる限り自分のことは自分でしたい」という入居者の思いを尊重する施設づくりを進めてきた。今回の導入はその理念を体現するものであり、ICT技術の活用によって、安心・快適な生活環境を整備するとともに、働き方改革の推進にも貢献する。さらに、2025年9月には新設される「ラスール長沢」でも同様のサービス導入が予定されている。