海外では広く普及しているものの、国内では依然として事実上禁止されている「有償ライドシェア」。しかし、訪日外国人観光客の増加、タクシー業界の人手不足、さらには物流業界における2024年問題と、課題は山積みだ。そうした状況の中、自民党の菅義偉前首相がライドシェアの「解禁」について議論していきたいとの意向を示した。今後、解禁への動きは現れるのだろうか。
【関連記事】自動車産業への衝撃:自動運転タクシー普及と自家用車の衰退予測
ライドシェアとは、その名の通り、Ride(乗る)をShare(共有)することだ。自家用車の所有者と乗りたい人を結び付ける移動手段で、一般的に「相乗り」や「配車サービス」として知られる。海外ではライドシェアが急速に広がっており、米国のUberやLyft、中国のDiDiなどが展開し、株式市場に上場するなどしている。世界のライドシェア市場は今後も拡大する見込みだ。
ライドシェアにはいくつかのメリットとデメリットが存在する。まず、提供者側にとっては、自動車という資産が活用できる、手軽に働けるといったメリットがある。一方で利用者側には、タクシーより割安で移動できることが大きなメリットだ。しかし、飲酒運転や車内での犯罪といったトラブルや、第二種自動車免許を持たないドライバーの技術・知識不足が課題となっている。
日本においては、道路運送法第78条に基づき、いわゆる「白タク」行為として有償ライドシェアが原則禁止されている。しかし、訪日外国人観光客数の増加やタクシー業界の人手不足が深刻化する中、国内でも一部解禁へ動いてきた。2015年には安倍晋三元首相が自家用車の活用拡大を提言し、2016年に一部改正法が成立。特定の地域や分野に限定し、訪日外国人などの観光客が運送対象となった。
さらに、自民党の菅義偉前首相は2023年8月19日、長野市内での講演で、ライドシェアの活用拡大に意欲を示している。「現実問題として足りない。いろんな観光地が悲鳴を上げている」と菅氏は述べ、ライドシェアの“解禁”について「議論していきたい」との考えを示した。
国土交通大臣の許可のない自家用自動車は有償で運送できないというのが現状であるが、MaaSやシェアリングエコノミーの観点からも、最終的にライドシェアは解禁される方向に向かっていく可能性が高いと考えられる。時代の変化に対応できる社会づくりが求められており、新しい時代に備えた議論が進展することが望まれる。