
(出典:南日本新聞デジタル)
鹿児島県阿久根市で、日本版ライドシェアの実証運行が2026年1月より開始された。深夜帯にタクシーが運行できないという地方都市特有の交通課題に対応するため、市と阿久根タクシー、九州経済研究所の三者が連携し、タクシー事業者の管理下で一般ドライバーが有償送迎を行う仕組みを導入した。
阿久根市では、運転手不足により午前0時以降に運行するタクシーが存在せず、飲食店の利用者や観光客が帰宅・移動できない状況が常態化していた。こうした「深夜の交通空白」を補完するため、日本版ライドシェアの制度を活用し、タクシー会社の運行管理のもとで副業ドライバーが車両を運転するモデルが採用された。
実証運行は1月末までの週末に実施され、午後11時45分から翌午前0時30分までの時間帯に限定して運行されている。これは通常のタクシー受付が終了した後の時間帯に絞ることで、既存タクシー事業との競合を避けつつ、移動ニーズの残る時間帯だけを補完する狙いがある。
実際の運転手には、市役所職員や飲食業関係者などが参加している。市財政課や水道課に勤める20代の職員がドライバーとしてハンドルを握るなど、地域を熟知した人材が移動を支える体制となっている点も特徴である。ドライバーはいずれも「地域の役に立てるなら」と応募しており、単なる副業にとどまらない公共的な意義を持った取り組みとなっている。
日本版ライドシェアは、一般ドライバーが自由に営業する海外型のライドシェアとは異なり、タクシー会社の管理下で運行される制度である。運賃や配車、車両管理はタクシー会社が担い、ドライバー不足という構造的課題を外部人材で補完する仕組みである点に制度の本質がある。
阿久根市の実証は、地方都市における「深夜だけ交通が消える」問題に対する現実的な解決策を示している。今後、利用実績や市民・観光客の評価を踏まえ、地域交通を維持する新たな選択肢として、日本版ライドシェアの本格導入が検討されていく見通しである。