日本の完全自動運転車の発展は、他国に比べ緩やかだ。福井県永平寺町で運行が始まった国内初の完全自動運転車は、安全性が高く事故は起きていないものの、自転車並みの極端な低速走行と閉鎖空間での運用にとどまっている。これに対して、米国や中国は市街地での自動運転を実現しており、そのギャップは拡大している。
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永平寺町での自動運転車は、特定の条件下での運行が前提だ。これは安全性を最優先とする考え方の反映であるが、現実の交通環境との隔たりもまた、否応なく浮かび上がっている。米国のゼネラル・モーターズやアルファベットは無人タクシーを市場に導入し、中国の百度もその足跡を追っている。
日本の自動運転車開発の遅れには、技術や国民性、そして交通環境の違いが影響しているとされている。日本は海外に比べて国土が狭く、さらに車、自転車、歩行者が行きかう道路状況はかなり複雑だ。日本政府は25年度を目処にレベル4の移動サービスを全国50カ所で展開する目標を立てているが、その達成は容易ではないだろう。
それに加え、日本の自動車業界は電気自動車(EV)の開発でも出遅れが目立つ。国内の自動車メーカーは、27年ごろまで商用EVの投入が見込まれていない。一方で、中国のBYDから技術を提供されたティアフォーは、国内でEVバスの販売を始めている。これは、自動運転に適した国産EVがないための措置である。
一方で、日本の自動車メーカーも無関心ではない。ホンダは世界初のレベル3自動運転機能を搭載した車を発売し、トヨタも中国の自動運転スタートアップに投資している。これらの動きが、日本の自動運転技術の進展を促す起爆剤となるかどうかは未だ不透明だ。
未来の自動車産業は、自動運転とEVが主役となる。この二つの技術は、近年の自動車産業の大きな潮流であり、それに遅れを取ってしまえば産業全体の競争力が低下する。日本は、現状の閉鎖空間と低速走行に留まらず、より現実の交通環境に適応した自動運転技術の開発と実装を進める必要がある。