(出典:姫島村公式サイト)
持続可能な社会実現のための手段として、エコツーリズムが注目されている。日本の観光業界でもその動きは見逃せない。今回は、大分県に浮かぶ美しい離島、「姫島」のエコツーリズム推進活動を取り上げる。
姫島は国東半島伊美港の沖合約6kmに位置し、日本ジオパークに認定されるほどの希少価値ある地質と、”きつね踊り”や”車エビ”、”カレイ”、”七不思議伝説”といった魅力が詰まった観光地である。しかし、島内での2次交通手段(タクシー、バス、レンタカーなど)の整備は不十分で、島内の周遊はフェリーで輸送した自家用車の使用もしくはレンタルサイクルの利用に限られており、観光の足となるものがなかった。さらに、島に住む多くの人が、島内で使用する家庭用車および本土で使用する業務用車と複数台の車を所持せねばならず、車両維持の負担に悩んでいた。
そこで2014年6月、地元の企業や団体、旅館などが参加し、「姫島エコツーリズム推進協議会」を設立した。この協議会は、自動車等の専門技術を提供する企業T-PLANと連携し、超小型電気自動車と同社が開発した100%自然エネルギーを利用して充電する「青空コンセント」を導入。観光客向けカーレンタル事業および島の住民向けカーシェア事業を行うことで、エコツーリズムの推進と地域活性化に取り組んできた。
(出典:姫島村公式サイト)
この取り組みが実を結び、姫島エコツーリズムは、第13回 EST交通環境大賞で「国土交通大臣賞」を受賞した。2019年度には「環境大臣賞」も受賞しており、これで2冠を達成した。授賞式は2023年7月18日に東京都千代田区のルポール麹町「ロイヤルクリスタル」で行われる予定だ。
受賞の理由としては、すべてのEV(電気自動車)を太陽光発電と蓄電システムで充電し、ゼロカーボン・ドライブを実現していることが挙げられた。さらに、地域住民の診療所への送迎にも活用しているという、地域との協働の姿勢も評価された。また、他地域の実証実験等に技術的な指導を実施し、EV活用の普及促進にも一役買っている。
地域資源の保全と活用を両立させるエコツーリズムは、持続可能な社会の実現に欠かせない要素である。姫島エコツーリズムの活動は、その成功事例だ。今後も、環境に配慮したモビリティの活用方法に注目したい。