(出典:HSMモビリティジャーナル)
ホンダモビリティソリューションズ(HMS)は、経済や環境などの社会課題の観点からモビリティの発展とその価値を発信するニュースレター「HMSモビリティジャーナル」を発行している。最新号では、注目度の高い“シェアードモビリティ”の歴史とトレンドに焦点を当てており、今回はその内容を紹介する。
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(出典:HSMモビリティジャーナル)
シェアードモビリティとは、複数のユーザーで使用を共有することを前提としたモビリティ全般を指す。近年、シェアリングの潮流があらゆる業界に広がっており、シェアードモビリティは大きく「ライドシェア」「車両シェア」「自律型シェアードモビリティ」の3分野に分かれる。
シェアードモビリティの市場は毎年14.7%の成長を遂げると予測されている。このスピード感は急速な都市化による人口集中、交通渋滞、大気汚染といった世界課題解決への期待がきっかけである。日本では、2024年4月にライドシェアが解禁され、自動運転車の実証実験が進められるなど、シェアモビリティの推進が加速しており、その中でも最も実用化が進んでいる分野が「車両シェア」である。今回は「カーシェアリング」に焦点を当て、日本と世界の視点でその歴史と最新トレンドをまとめた。
カーシェアリングはスイスが発祥で、1948年のチューリヒ市では、共同で自動車を購入・所有することを目的とした共同組合「セファージ」が設立され、これがカーシェアリングの起源とされる。その後、1980年代の環境問題への関心の高まりで二酸化炭素排出を抑えることができるカーシェアが再び注目されるようになった。現在、スイスでは、公共交通機関との連携や国による後押しを受け、カーシェアリングが普及している。車両へのハイブリッド車・電気自動車(EV)導入も進んでおり、環境意識の高い国民に支持されている。
日本を見ると、カーシェアリングは1988年に法人化されたが、当時は高い注目を集めながらも普及には至らなかった。その後2010年代に入り認知度、利用者数が急速に伸びていった。HMSモビリティジャーナル編集部が行った調査によると、2024年現在、都市部ではカーシェアリングの認知度は77.5%で、利用経験者は8.2%という結果であった。
(出典:HSMモビリティジャーナル)
次に今後カーシェアを利用したいと思うかというアンケートでは、利用したい人は32.9%で特に若い世代ほど利用したいと考えている人が多かった。また、自動車を所有するつもりがない人の中で、自動車を利用したいと回答した人は24.0%で、このようなニーズも一定数存在していた。このように、カーシェアリングの需要は今後ますます高まっていくと考えられる。
(出典:HSMモビリティジャーナル)
カーシェアリングは、日常的な買い物、レジャーや旅行など、様々なシーンでの利用が期待されている。お出かけ先での移動や、日常生活での「ちょっとした移動」の足として、利便性の高さが評価されている。カーシェアリングは、環境負荷や交通課題の解決に貢献し、新しいライフスタイルに合致する手段として、今後の発展が期待される。