世界的に脱炭素化が叫ばれるなか、電気自動車(EV)は近年、電池の性能向上や自動車排ガス規制の進展に伴い、その存在感を強めている。今回は、EV普及の背景から、今後のレンタカー業界への影響までを考察する。
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電気自動車(EV)のメリットは、走行音が静かで振動が少ないこと、ランニングコストが安いこと、環境負荷が小さいことなど多岐に渡る。さらに、補助金や減税制度の利用により、販売価格よりも安価で導入することも可能だ。欧州では、これらのEVのメリットを背景に、二酸化炭素を排出する乗用車と小型商用車の新車販売を2035年に禁止することが2022年10月に決定された。2030年には二酸化炭素排出を2021年比で55%削減し、2035年には100%削減するという段階的なステップを踏むとしている。販売が可能となるのはEVや燃料電池車(FCV)であり、内燃機関を持つハイブリッド車(HV)やPHEV(プラグインハイブリッド車)、クリーンディーゼル車の販売は禁止される。
この動きは、欧州だけでなくアメリカでも見受けられる。カリフォルニア州やワシントン州、オレゴン州などでは、同様に2035年までに新車販売を全てZEV(Zero Emission Vehicle)にすることが決定されている。
これらの政策は、2015年に採択されたパリ協定に端を発している。パリ協定は「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること」を目指すもので、その達成のためには、排出を伴うガソリン車から排出を伴わないEVへの転換が求められる。
この動きは日本にも波及している。2021年1月には、2035年までに新車販売を全て「電動車」にすることが国会で発表された。ただし、日本は欧米と異なり、ハイブリッド車も新車販売が可能であり、ガソリン車やディーゼル車のみが販売を終了する予定だ。この規制は現段階では欧米よりも比較的緩やかであるが、今後は欧米の潮流に追随し、同水準の規制を採用する可能性も考えられる。
方針転換の背景には、パリ協定とともに、「2050年カーボンニュートラルの達成」宣言がある。2020年10月に菅前総理が宣言した「カーボンニュートラル達成」とは、社会活動による温室効果ガスの排出量から森林などによる吸収量を差し引いてゼロにすることを指す。2035年までに新車販売を全て電動車にすることは、この目標達成の一環である。日本においても、EVの普及は今後さらに進んでいくと考えられている。レンタカー業界にとっても、この電動車へのシフトは無視できない動きであり、ビジネスモデルの再構築が求められていくだろう。
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