新型コロナウイルスの影響は、多様な業界に深刻な影響を与えた。特に観光業界はその大波を余儀なくされ、その一部としてのレンタカー業界も例外ではなかった。その中で、レンタカー業界はどのように変化したのだろうか。
データで見るレンタカー業界
全国の車両数推移
2018年3月末 | 2019年3月末 | 2020年3月末 | 2021年3月末 | 2022年3月末 | 2023年3月末 | |
台数(台) | 422,480 | 477,378 | 499,234 | 460,007 | 489,858 | 565,651 |
増減(台) | +34,084 | +54,898 | +21,856 | ▲39,227 | +29,851 | +75,793 |
前年比 | 108.8% | 113.0% | 104.6% | 92.1% | 106.5% | 115.5% |
(出典:全国レンタカー協会)
一般財団法人全国レンタカー協会の調査によれば、レンタカーの車両数はコロナ前まで右肩上がりの成長を見せていた。2009年から2020年まで、毎年25,000台ほどのペースで順調にその数は増加している。しかし、コロナ禍を迎えた2021年には、車両数が39,227台減(前年比92.1%)と大きく減少しており、業界全体で打撃を受けたことがわかる。特に大きな影響を与えたのは、緊急事態宣言や外出自粛だろう。この期間、旅行はもちろん、不要不急の外出が控えられ、ビジネスもオンラインへとシフト。その間のレンタカー需要は大きく低下した。レンタカー事業者にとって、収益の少ない状態で車両数を抱えることはコストがかかる。苦渋の決断で車両を手放す事業者も多くいたようだ。
しかし、パンデミックの落ち着きとともに、2022年には29,851台増加(前年比106.5%)し、コロナ前と近い水準にまで回復。さらに、2023年には75,793台増加(前年比115.5%)し、コロナ以前と比較しても大きな成長を遂げた。これは、パンデミックが収束するにかけて、事業者が先の需要を見越して車両を買い戻し、実際にそれが需要増のタイミングと合致したことが大きいと考えられる。
レンタカー料金の消費者物価指数
2018年8月 | 2019年8月 | 2020年8月 | 2021年8月 | 2022年8月 | 2023年8月 | |
物価指数 | 105.3 | 102.3 | 102.9 | 104.2 | 104.4 | 127.3 |
(出典:総務省消費者物価指数)
では、料金面ではどうだろうか。総務省が公表している消費者物価指数を見てみよう。これは、消費者が購入する際の小売価格について、2020年の平均価格を基準の100として、物価がどのように変動しているかを示す数値だ。これによると、レンタカー料金は上記グラフのように推移している。毎年夏場に料金が上がっているのはまとまった休暇が取りやすく、旅行需要が高まるためと考えられる。コロナ前とコロナ禍を比較すると、大きな料金変動はないものの、夏場の料金の上がり幅は若干小さくとどまっている。しかし、コロナ禍が落ち着いた2023年あたりから急激に上昇。2022年12月時点では100.3だったのに対し、2023年8月時点では、127.3まで上昇している。
レンタカー業界の現状
このように、コロナ禍で減少した車両数は、現在、順調に増加しており、コロナ前と比較しても増加傾向にある。また、レンタカー料金もコロナ以前よりも高まっており、旅行業界の回復を示している。しかし、業界が直面している大きな問題として、従業員の不足が挙げられる。労働力不足が叫ばれる現在において、コロナ禍で削らざるを得なかった従業員を取り戻すのは、なかなか困難な状況だ。スキマバイトサービス「タイミー」の調査によれば、レンタカー業界のスキマバイト求人数は2023年7月に過去最高を記録しているという。
また、従業員不足は料金の大幅な上昇にもつながる。車両は買い戻せても従業員がおらず、業務が滞ることで供給数が減少。その結果、業界全体の料金がより上昇してしまう。これは、レンタカー業界だけでなく、観光業界全体、特にホテル業界でも顕著に見られる問題だ。
さらには、水際対策の解除や円安の影響によるインバウンドの増加に伴い、以前よりもさらに細やかなサポートが求められている。今後は、レンタカー業界も運営の効率化やDX化を進める必要があるだろう。
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